野良猫のTNRは無意味?反対意見やメリットデメリットまとめ

野良猫のTNRは無意味?

猫のTNR活動って意味あるの?

一度猫を保護して、また野に放すことは「遺棄」じゃないの?

猫を勝手に手術するのは動物虐待では?

「猫のTNRって最近耳にするけれど、本当に『良い』ことなの?」

ひつじ(やまだゆうか)

そんな風に考えられたあなたは、すばらしいです。

なぜかって?

猫のTNR活動は世間的にみると『良い』行いですが、
はたして本当の本当に猫や人にとって最善なのか。

自分自身の頭で考えているあなたは、非凡な才能をお持ちでしょう。

ちなみに筆者自身は、何も考えずに『TNRは良いこと』だと思っていました。

そこでこの記事では、
  • 猫のTNRへの反対意見まとめ
  • そもそも猫のTNR活動で何をしているのか
  • 猫のTNRのデメリット・メリット

などを徹底的に解説していきます。

アメリカが出したTNR活動の論文や日本での事例も紹介しますので、
猫のTNR活動への疑問がきっと解決するはず!

目次

猫のTNR活動は「反対」「迷惑」という声4選

TNR活動に対しては、様々な意見があります。
ここでは、特に多く聞かれる反対意見を4つご紹介します。

TNR活動4つの「反対意見」
  1. 猫を保護して捨てるのは動物愛護法違反では?
  2. 猫のTNR活動をしても意味がないんじゃない?
  3. 耳をカットしたり、手術するのは動物虐待では?
  4. エサを与えるから猫が増えてしまうのでは?

これらの意見について、詳しく見ていきましょう。

反対意見①猫を保護して捨てるのは動物愛護法違反では?

「猫を捕獲して避妊去勢手術後にリリースするTNR活動は、動物愛護法に違反するのではないか?」
という意見があります。

動物愛護法では、愛護動物を遺棄することは明確に禁止されています。

TNR活動における「元の場所に戻す」という行為が、
「遺棄」にあたるのではないかと懸念されるためです。

平成26年12月12日(2014年)に制定された
「動物の愛護及び管理に関する法律第 44 条第3項に基づく 愛護動物の遺棄の考え方について」によると、

「遺棄」とは、同条第4項各号に掲げる愛護動物を移転又は置き去りにして場所的に離隔することにより、当該愛護動物の生命・身体を危険にさらす行為のことと考えられる。 個々の案件について愛護動物の「遺棄」に該当するか否かを判断する際には、離隔された場 所の状況、動物の状態、目的等の諸要素を総合的に勘案する必要がある。(一部抜粋)

環境省自然環境局 総務課 動物愛護管理

このように記されています。

つまり、愛護動物の命や身体が危険になる状態で捨てると、「遺棄」になるということ。

例えば、
  1. 飼い猫が捨てられると、外で生きる術を知らないので「遺棄」にあたる
  2. 野良猫であっても、生きていくのに厳しい状況(寒さ・暑さが厳しい、エサや水を確保できない場所など)で捨てられると、「遺棄」にあたる
  3. 自分で動くことのできない老齢猫や仔猫を捨てると「遺棄」にあたる

などが決められています。

なので野良猫を一時的に保護し、避妊去勢手術をして元いた(生活していた)場所に健康な状態でリリースすることは、
動物愛護法違反にはならない可能性が高いでしょう。

ですが上記の例の通り、
野良猫であっても真冬や真夏に身体に傷を負ったままリリースされると、微妙なところではあります。

もとよりTNR活動家さんたちは、
愛護動物たちの身体の調子や外の環境もしっかり考慮して行動しています。

ひつじ(やまだゆうか)

もし体調がすぐれない猫がいた場合は、
施設での保護や譲渡も視野にいれているのでご安心を。

反対意見②猫のTNR活動をしても意味がないんじゃない?

TNR活動をしても、結局また別の猫がやってきて増えてしまうから意味がない
という意見もあります。

確かに一定の範囲だけでTNR活動を行っても、
周辺地域から新たに猫が流入してくる可能性が高いです。

またTNR活動が十分に行き届かない地域では、
繁殖が止まらず、結果的に猫の数が増加してしまうという考えもあります。

例えば、

ある町内会が熱心にTNR活動を行った結果、その地域では猫の数が減りました。

しかし隣接する地域ではTNR活動が行われていないため、
猫が移動してきて、再び猫が増えてしまうというケースが考えられます。

極論ですが、
世界中の猫を一斉に避妊去勢手術しない限り、猫の増加を食い止めることはできないでしょう

しかしTNR活動は、
猫の繁殖を抑えるための有効な手段なのは確か

ひつじ(やまだゆうか)

TNR活動をしなかった場合、
今よりさらに多くの仔猫が殺処分されるでしょう。
悲しい。

反対意見③耳をカットしたり、手術するのは動物虐待では?

TNR活動で、猫の耳をカットしたり手術したりするのは、動物虐待ではないか?
という意見もあります。

  • TNR活動では、避妊去勢手術済みの猫を判別するために、
    耳の一部をカット(Vカット)します。
    耳カットすると元に戻る可能性は、ほぼ無いでしょう。
  • また避妊手術はメス猫のお腹を切って手術するので、
    身体的な負担となる可能性があります。

これらの行為が、動物福祉に反するのではないかという懸念があるためです。

例えば、

猫好きの人が耳をカットされた猫を見て、「かわいそう」「虐待だ」と感じてしまうことがあります。

ですが猫耳の「Vカット」は避妊去勢手術済みの猫を判別するため、
国際的に認められた方法です。

それに麻酔した状態でカットされるため、
痛みを感じさせることはありません

また避妊去勢手術は、野良猫・飼い猫関係なく健康管理や繁殖制限のために必要です。

避妊去勢手術のメリット

メス猫の避妊手術では、
乳がんや子宮内膜症、
卵巣嚢腫などのメス特有の病気を予防できます。

オス猫の去勢手術では、
精巣の病気の予防、
マーキング行動(おしっこスプレーなど)の抑制、
発情期のストレスの減少などの効果があります。

ひつじ(やまだゆうか)

人と共に生活していくうえで、
避妊去勢手術をする方が人にも猫にもメリットが大きいということです。

ただ、筆者も家の猫を避妊去勢手術したときは気が気じゃなかったのは、ナイショの話。

反対意見④エサを与えるから猫が増えてしまうのでは?

野良猫にエサを与える人がいるから、猫が増えてしまうのではないか?
という意見もあります。

エサを与えることで、猫は安定的に食料を確保できるようになり、生存率が上がります。

その結果、繁殖が活発になり、猫の数が増えてしまうという考えです。

例えば、

ある公園で毎日決まった時間にエサを与える人がいると、その公園に多くの猫が集まってきます。

その結果、公園の環境が悪化したり、近隣住民とのトラブルが発生したりすることがあります。

確かに無計画なエサやりは、猫の増加に繋がる可能性が高いでしょう。

しかしTNR活動と並行して適切なエサやりを行うことは、
猫の健康管理や捕獲の効率化に繋がります。

エサを与える際には、
  • 置きっぱなしにしない
  • 時間を決めてる
  • 食べ残しを片付ける

など、周辺環境への配慮が必要です。

ここまでのまとめ

野良猫のTNR活動には、様々な意見があります。

反対意見の中には、
動物を大切に思うからこそのものや、
現実的な問題点を指摘するものもあります。

活動する方も外野の私たちも反対意見を理解し、
今一度自分の頭で考え、
猫にも人間にも生きやすい世界を見つけ出すことが重要です。

そもそも猫のTNR活動とは?

野良猫問題の解決策の一つとして注目されているTNR活動。

でも、

  • 具体的にどんなことをするのか、
  • 誰がやっているのか、

よくわからないという人もいるかもしれません。

ここではTNR活動の基本的な内容について、わかりやすく解説します。

猫のTNR活動は避妊去勢手術して野良に戻すこと

TNR活動とは、野良猫を捕獲し、不妊・去勢手術を施した後、元の場所に戻す活動のことです。

TNRは、
  • Trap(捕獲する)
  • Neuter(不妊・去勢手術をする)
  • Return(元の場所に戻す

の頭文字を取った言葉です。

野良猫の繁殖を抑え、数を増やさないことを目的として行われます。

不妊・去勢手術をすることで、
メス猫は妊娠できなくなり
オス猫は発情期の鳴き声やケンカが減り
結果的に地域住民とのトラブルを減らす効果も期待できます。

「手術をするのはかわいそう」
「元の場所に戻すのは無責任だ」
という意見もあるかもしれません。

ひつじ(やまだゆうか)

しかしTNR活動は、
不幸な命を増やさないための苦渋の選択とも言えます。

手術は獣医によって適切に行われ、猫への負担を最小限に抑えるように配慮されます。

また、元の場所に戻すのは、猫が長年生活してきたテリトリーであり、
生きていく術を持っていると考えられるからです。

猫のTNR活動は誰がしている?

TNR活動は、主にボランティア団体や個人ボランティアによって行われています。

行政が関わる場合もありますが、多くの場合、
動物愛護に関心の高い個人や団体が中心となって活動しています。

これらのボランティアは、
自らの時間や労力、資金を使って

  • 猫の捕獲
  • 手術の手配
  • 術後のケア

などを行っています。

TNR活動は、ボランティアの善意によって支えられている活動です。

しかし、ボランティアの負担は大きく、
資金不足や人手不足に悩まされている団体も少なくありません。

ひつじ(やまだゆうか)

TNR活動を支援するためには、寄付やボランティア参加だけでなく、
地域住民一人ひとりが野良猫問題に関心を持ち、
できる範囲で協力することが大切
です。

TNR活動とともに、地域猫活動をする団体や個人の方もいます。
地域猫については下の記事で詳しく解説しています。

猫のTNR活動3つのデメリット

野良猫の数を減らすための有効な手段として知られるTNR活動ですが、良いことばかりではありません。

ここでは、TNR活動のデメリットに焦点を当て、詳しく解説していきます。

デメリット①猫の糞尿・ゴミ荒らしの解決にはならない

TNR活動を行ったとしても、
猫の糞尿やゴミを漁る行為といった問題行動が根本的に解決するわけではありません

TNR手術は、猫の繁殖能力をなくすためのものであり、
猫の性格や行動を直接変えるものではありません

そのため、手術後も猫はこれまでと同じように生活し、
糞尿をしたり、ゴミを漁ったりする可能性があります。

特に、同じ場所で排泄したりゴミ荒らしを長年してきた猫は、すぐに習慣を改めることは難しいでしょう。

しかしTNR手術によって、
猫の発情期の鳴き声が軽減されたり、
オス猫同士のケンカが減ったりする効果は期待できます。

なのでTNR活動と並行して、

  • 猫のトイレを設置したり、
  • ゴミ置き場をネットで覆ったりする

など、地域全体で対策を講じる必要があります。

デメリット②避妊去勢手術や活動にお金がかかる

TNR活動を行うためには、猫の避妊・去勢手術費用がかかります。

手術費用は、動物病院や地域によって異なりますが、一般的に
オス猫では10,000〜20,000円
メス猫が20,000〜40,000円ほど。

また、ワクチン接種やノミ・ダニ駆除なども行う場合、さらに費用がかさみます。

手術やワクチン、駆虫薬の費用は、
ボランティア団体や個人の負担となることが多く、
活動を継続するための大きな課題となります。

例えば、

あるボランティア団体がTNR活動を行うために、
年間100匹の猫に手術を受けさせるとします。

1匹あたりの手術費用が平均22,500円だとすると、
年間で225万円の費用がかかることになります。

上記に加えて、ワクチン接種や医療費なども考えると、
かなりの金額になるでしょう。

そこで一部の自治体では、TNR活動に対する助成金制度を設けています。

また、動物病院によっては、TNR活動に協力的な価格で手術を行ってくれる場合もあります。

これらの制度や協力を積極的に活用することで、
費用負担を軽減することができます。

デメリット③猫の身体に負担になる

TNR活動における捕獲や手術は、猫の身体に負担をかける可能性があります。

野良猫は人間に慣れていないことが多く、
捕獲器にかかること自体が大きなストレスになります。

また、手術も麻酔を使用するため、猫の身体に負担がかかります。
手術後も、傷口のケアが必要であり、感染症などのリスクも伴います。

そこで、
  • 捕獲器を猫が警戒しないように工夫したり、
  • 手術前に獣医による健康チェックを受けさせたり、
  • 手術後には適切なケアを行ったりすることが重要です。

また、高齢の猫や病気を抱えている猫については、
手術の可否を慎重に判断する必要があります。

ここまでデメリットを解説しましたが、
TNR活動にはメリットも存在します。

猫のTNR活動の3つのメリット

野良猫が増えすぎて困っている地域にとって、TNR活動は猫と人が共存していくための有効な手段です。

猫好きはもちろん、猫に困っている人にとっても、TNR活動は多くのメリットをもたらします。

ここでは、TNR活動の具体的な3つのメリットについて解説します。

メリット①繁殖を抑え、不幸な猫を減らす

TNR活動の最大のメリットは、なんといっても
猫の繁殖を抑制し、不幸な猫を減らせる点です。

TNR活動は、猫の数をコントロールする上で、
現状最も効果的な方法の一つです。

野良猫は、あっという間に増えてしまいます。
具体的にメス猫は年に2~3回出産し、一度に2~3匹の子猫を産みます。

その結果、猫の数はネズミ算式に増えていき、
飢えや病気で命を落とす猫も少なくありません

TNR活動を行うことで、これらの悲しい状況を防ぐことができます。

メリット②繁殖時の鳴き声やマーキングを減らす

猫の発情期の鳴き声やオス猫のマーキングは、近隣住民にとって大きな迷惑となることも。

ですがTNR活動を行うことで、
猫は発情や繁殖行動をしなくなり

  • 発情期の独特な鳴き声
  • オス猫特有の強い臭いのマーキング行動

が減少します。

「手術を受けた猫でも、多少はマーキングをするのでは?」
という意見もあるかもしれません。

確かに、手術する年齢が遅ければ遅いほど、
発情やマーキング行動が手術後でも残りやすくなります

ひつじ(やまだゆうか)

なので、できるだけ早く手術を受けていない猫を見つけ出して
TNR活動や保護することが大切なのです。

メリット③TNR後の猫のお世話がしやすくなる

TNR活動を行った猫は、耳カット(V字カット)と呼ばれる目印がつけられます。

これにより地域住民が、
猫が手術済みであることを一目で判断できるようになり、
お世話がしやすくなります。

地域住民や地域猫活動をしている人は、耳カットのある猫に対して、
安心してエサを与えたり
健康状態を観察したりすることができます。

また、TNR後は猫の性格が穏やかになるので、
ケンカでの怪我が減り、管理がしやすくなる利点も。

もとも猫は縄張り意識が強いので、
あまり大多数で群れることはありません。

ひつじ(やまだゆうか)

ですが避妊去勢手術して落ちついた性格になれば
多くの猫が集まりやすくなり
さらにTNR活動がしやすくなるということです。

まとめ|猫のTNRは無意味ではないが最善策ではない

TNR活動は、
野良猫の迷惑問題
殺処分
の解決に向けた重要な取り組みの一つです。

しかし、それだけで全てが解決するわけではありません。

TNR活動は猫の繁殖を抑制し、騒音や悪臭を減らす効果がありますが、
猫の数を完全にゼロにすることはできません。

また、TNR活動を行っても、猫が病気になったり事故にあったりする可能性は残ります。

例えばTNR活動と並行して、
  • 地域住民への啓発活動
  • 猫の適切な飼育方法の周知
  • 遺棄の防止を呼びかける

などを行うと、
野良猫の数を減らす効果をさらに高めることができます。

また、保護された猫の里親探しを積極的に行うことで、
愛護動物の福祉向上に貢献することができます。

今回の記事では、TNRに反対する意見を解説しました。

賛成している方も反対している方も、
お互いの意見を頭ごなしに否定するのではなく、
受け入れながら一番良い方法を見つけ出すことが大事です。

もちろん簡単なことではないですし、
現場では『今できること』で手一杯になっていることでしょう。

なのでこの記事やサイトでは、
猫が好きな方も猫が嫌いな方、そもそも興味のない方にも
動物福祉についての情報を更新していきます。

まずは『知る』ことから、すべてが始まると信じて。

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この記事を書いた人

Webライター・編集・現役宅建士・元動物看護士
【得意ジャンル】不動産・動物・MBTI・アニメ

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